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なぜ彼らはクレジットカードを発行したいのか

交通系やメーカー系の企業が、なぜクレジットカードに進出したのでしょうか? そのカギは顧客情報にあります。情報がビジネスの成否を決める時代だからです。

流通系クレジットカードの勃興を横目に見て、交通系やメーカー系の企業がイメージしたのは、自社の顧客情報を生かしてさらに商品を販売できないだろうか、ということでした。流通系企業がPOSシステムの導入によって販売管理ができるようになり、そこからクレジットカード事業が必然的に派生したように、80年代前半はコンピュータの性能が向上したことも追い風になっているのです。

金融機関は預金や融資のオンライン処理をスタートさせ、子会社として開始したクレジットカード業務はすでに10数年が経過していました。86年に旧日本信販がVISAカードを発行するなど、信販業界でも本格的なクレジットカードの時代に入ったころです。銀行系クレジットカードは業務のシステム化か進み、今度は長年にわたって投資してきたシステム経費の回収のために、そのシステム自体を売り物にすることを考え始めていました。

交通系やメーカー系が新規参入しても、先行している銀行系クレジットカード会社のような巨費を投じなくて済む土壌が80年代後半にでき上がりつつあった、というのが彼らのクレジットカード進出につながりました。

たとえば、トヨタは自動車販売だけでなく、住宅販売やレンタカーも展開していて、事業の裾野は幅広いものがあります。自社で手掛けるすべてのビジネスに共通するのが、決済イコール金融なのです。JR東日本は国内最大の鉄道会社であり、JALも昔からの「ナショナルフラッグ」です。

会員獲得は知名度が生命線です。業界最大手の各社が、そのネームバリューを利用しなかったというのがむしろ不思議なくらいです。

こうした「第3勢力」のクレジットカード進出は、言い換えると顧客の囲い込みでもあります。クレジットカードの最大の強みは、個人情報が蓄積できる点です。しかも、そのなかに利用者の懐具合や購買動向などが詰め込まれているので、これを逃す手はありません。

いま銀行系クレジットカードでは、銀行本体での発行が増えつつあります。それは、これまではクレジットカード会社が子会社だったために、個人情報の共有が許されず、本体業務に取り込めなかったからです。本体発行すれば、個人信用情報は銀行が保有できます。情報は整備されてこそ、初めて武器となります。

近年、よく使われる「CRM」(顧客管理)も、個人情報が体系化されていなければ有効活用できません。いずれも業界最大手クラスの企業のクレジョトカード事業は、既存業者の強力なライバルとなっており、彼らを軸にした業界再編の可能性も否定できません。